展覧会「Matatu Project in Movement」がオープン

この数ヶ月間ほど、西尾工作所ナイロビ支部は「Bebabebag」というプロジェクトタイトルのもとでナイロビ市内の公共交通機関と人力運搬について、アートとファッションの視点からリサーチと作品制作、パフォーマンスを行なってきました。同じ期間に、ケニア出身アーティストであるデニス・ムラグリも公共交通機関のマタツを題材に版画と絵画作品を制作してきました。この2組による展覧会「Matatu Project in Movement」が、2012年12月7日(金)から2013年1月15日(火)まで、ナイロビのウェストランド地区にあるLe Rustiqueで開催されています。



オープニング当日は、私たちの友人やコラボレーター、デニスの所属するKuona Trustのアーティスト仲間などが足を運んでくれました。欧風カフェギャラリーの壁には、マタツのイメージを更新するようなデニスの迫力ある版画作品がたくさん掛けられ、その間を縫うように「Bebabebag」の鞄型オブジェが吊り下げられています。



このカフェギャラリーにくるような外国人や高所得者層は、普段、公共交通機関や人力運搬などに「自分たちは使用するべきではない乗り物」としてレッテルを貼ったり、見下したりして絶対に乗りません。しかし、「公共交通機関こそが都市の生命線であり、都市景観の要である」という信念に近い切望をもって、この2組のアーティスト集団は作品制作を手がけています。これらのイメージを張り付けまくることでこの空間をハイジャックできたような、現実においてもナイロビの公共交通機関の更新が既存の社会政治的隔離を撹乱していくような、そのような気迫がポップでユニークな作品の裏側からにじみ出ていればと思います。



入り口の棚に置かれたマタツ18分の1サイズの鞄「Bebabebag Mini」は、スタッフやお客さんに好評です。サイドに貼られた標語ステッカーが1点1点違って面白く、それを楽しげに読んでる姿が見られます。たとえば、私の好きな標語はこれ、「I WILL USE THE STONES THAT MY ENEMIES THROW AT ME TO BUILD MY OWN FOUNDATION(私の敵が投げてきた石で、私の基礎を築いてやるわ)」。「なにくそ」というスピリットや「じーん」とくる感動、「フフフ」と笑うような皮肉などが英語やスワヒリ語で書かれていて、言葉遊びが好きなケニア人らしさを感じます。私たちの小さな息子も大のお気に入り。「ベバベバ!(運べ運べ!)」と嬉しそうに叫びながら肩からかけるので、彼のファーストバッグになりました。

2012年12月21日 西尾咲子

小型バッグ「Bebabebag Mini」



12月7日から始まる展覧会「Matatu Project in Movement」での展示に向けて、ンガラ地区のマタツ修理職人たちと、マタツの形をした小型バッグ「Bebabebag Mini(ベバベバッグ・ミニ)」を制作しています。マタツは、ケニアの一般大衆の生活の足である公共交通機関(ミニバス)です。ンガラ地区の修理工房群は、数あるマタツ修理場のなかでも、最も大きくて活気ある場所。ちょうど3年前から何度も足を運んで共同作業してきたので、縫製職人や溶接工、大家、問屋店主などとも顔なじみになり、くつろいで働ける仕事場の1つになりました。



ここのマタツ修理工房で長年働いてきた職人たちの手とミシンで作られた「ベバベバッグ・ミニ」には、ユニークな魅力がいっぱい。カラフルな素材は、マタツの座席シートとまったく同じものを使用。手で触れると、まるでマタツに乗り込んだ気分になります。両側面にはそれぞれ、オリジナルステッカーの飾り文字と格言が貼られており、マタツ独特の風格を醸しだしています。上面にジッパーがあり、容量はほど良く大きめ。取り外し可能な取っ手をつけて、財布と携帯、手帳などを入れるハンドバッグとしてもよし、子ども用のバッグとして肩に斜めがけしてもよし。道具や化粧品を入れるポーチとして机に置けば、お部屋を飾るアクセサリーにもなります。



「ベバベバッグ・ミニ」は展示の一部になるだけでなく、販売もしています。お気に召した方は、ぜひご自宅の小物入れや買い物のお供として、連れて帰ってください。あなたの毎日の暮らしに、活気あふれるナイロビ下町の気分を運んでくれます。

※日本へも発送します。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

2012年11月26日 西尾咲子

Bebabebag Street Show(ストリートショー)決行!


Photo: Emma Nzioka

Bebabebagプロジェクトここ一番のクライマックスです。ナイロビの光景とジュアカリたちとともに作ってきた新しいバッグBebabebagを、ストリートに還す日です。「自宅からアートセンターの友人のところへ運ぶだけ」という理由から、特別な許可証を取らずに、モデル9人たちに素手と徒歩でこの巨大バッグを運んでもらいました。出発地はランガタ大通りにあるTモール。ゴールはハーリンガム地区にあるKuona Trustです。約7〜8キロの距離をみんなで2時間かけて行進しました。


Photo: Emma Nzioka

「警察のおとがめ、逮捕があったら厄介だな」という心配もなんのその(過去に「Self Select」や「Overall」「Kangaeru」では、怒られたり区長のオフィスに連行されたりした際に、市役所からの許可書が力を発揮してくれたのです)。作品が悪いのか、モデルが悪いのか、いやいやそんなことではなく、ナイロビの日常的風景がものスゴイので、一風変わった巨大バッグを持って歩いていても、いちゃもんをつける人は誰もいません。もともと同じサイズのシルエットが、普段からこの通りをゾロゾロ歩き回っている街なのです。


Photo: Naoko Sakuragi

さて特筆すべきは、すばらしく素敵なカメラマン2名が駆けつけてくれたことです。日本から写真撮影の仕事でケニアに滞在していたフォトグラファー桜木奈央子さん。そして、ナイロビ出身のファッション専門カメラマンかつケニア大手新聞Nationの記者でもあるエンマ・ンジオカさんです。ショーの写真はすべて2人が撮影してくれた写真を使用させていただいています。ぜひゆっくりと「Beba Beba(運べ、運べ)!」がいっぱいのストリートをお楽しみください。


Photo: Naoko Sakuragi


Photo: Naoko Sakuragi

2012年10月13日 西尾咲子

ステッカー装飾屋のオフィスを訪ねる



ナイロビを走るマタツと中型バスの窓や車体には、たくさんのステッカーが貼られています。ルート番号だったり、会社名だったり、格言めいたものだったり、模様だったり。これらのステッカーの色合いやフォント、装飾からは「自分らしく格好良くありたい」気合いのようなものや、マタツや中型バスが本来宿している「ルール破りで人間的な不良っぽさ」みたいなものが感じられます。



このステッカーのもつ雰囲気を「Bebabebag」の作品にもまとわせようと、今日はステッカー装飾屋のオフィスを訪ねて、ステッカーのデザインと注文をしてきました。ンガラ地区のいつもの制作現場あたりにあるビルの一室が、オフィス兼工房です。2畳ほどの小さな部屋には、大きな裁断機が2台と材料、デザインをする人が数名と、ビニールのカッティングシートをカッターナイフで仕上げる人が数名。それらは部屋におさまりきらず、外の廊下にはみだしています。



デザイナーは慣れた手でイラストレータのソフトを使いこなし、たくさんのフォントから「Bebabebag」に合うマタツらしい字体をいっしょに選んでくれます。50色以上の色見本から、お気に入りの色を選びます。かたわらでは青年たちが黙々と作業中。その真剣で忙しい働きぶりが気持ち良く、何より仕上がりが充分満足いくものです。

ンガラ地区からの帰り道、彼らのような職人が手がけたであろうステッカー装飾がどんどん目に飛び込んできて、ナイロビのストリートがまるで作品展のように楽しめました。

2012年10月9日 西尾咲子

Bebabebagの制作



今週はBebabebagの制作がピークを迎えました。

今回一番のコラボレーターであるミシン縫製職人のキアリエさんが大活躍を見せてくれました。これまでマタツのシートを縫い続けてきた経験があるので、「こうやれば上手くいく」という勘が働き、すべてを言わずともオーダーを汲み取っていきます。見たことも縫ったこともない不思議なパターンを縫うのを、そしてそれが形になったときを、誰よりも楽しんでいました。



キアリエさんと西尾美也が熱心に作業する場には、つぎつぎとジュアカリ職人達が集まってきます。「何を縫ってるんだ?」「次は何を縫うんだ?」「何色の布を足すんだ?」「ハサミはどこへいった?」「こうした方がいいんじゃないか?」と質問しながら、自然と手が出てきて、糸を切ったり素材を渡したり、作業に加わってきます。



その中には、2年前にも「Overall」ワークショップに毎日参加していたムトゥアさんの姿が。当時と同じように、興味津々の目で作業を観察し、できあがる一つ一つの形を驚きのため息をつきながら喜んでいます。

こうして順調にBebabebagが10体、完成しました。マタツのシート素材とそれを縫い続けてきた職人の腕。強力なナイロビらしさを詰め込んだバッグが、もうすぐストリートに登場します。

2012年10月4日 西尾咲子

テレビ局が取材にやってくる



今日は、ケニア主要テレビ局の一つであるK24局が「bebabebag」の取材にやってきました。おそらく、ンガラ地区マタツ修理工場群にテレビ取材クルーがアートを特集しようとやってくるのは2回目。前回は、2010年1月にKTN局とGBS局が「Overall」プロジェクトを撮影しにやってきたとき。「ンガラ地区でアート」というのが変だし、さらに「ケニアで超マイノリティの日本人」というのが、取材欲をかき立てるのかもしれません。

前回と同じく、大きいビデオカメラとレポーターのマイクが現れると、職人たちは照れたり緊張したり怒鳴ったり興奮したり隠れたり楽しそうだったりで、それぞれのさまざまな反応が渦巻き、作業場はちょっと乱れます。

それらをものともせず、自分たちのイメージどおりの絵を撮ろうと、レポーターとカメラマンはさまざまな要求を出してきます。「ここのお店の中でインタビューに答えて!」「この中からあそこへ歩いてみて!」「もう一度やり直し!」「メモ帳に書いてるフリをして!」「メンバー同士、相談し合ってるフリをして!」私たちのペースも乱れます。

テレビを通して私たちがやっていることが少し広まって繋がるべきところに繋がるかもしれないという淡い期待はさておき、周囲とのやり取りがぎこちなくなってしまうのと(たとえば、問屋でボラれても追及することができず…)、インタビューに即応しきれないもどかしさで、やっぱり気疲れしてしまった一日でした。

2012年9月28日 西尾咲子

材料の仕入れ&パターン制作



ンガラ地区のマタツ修理工場群にある細い路地の奥に、布地問屋が数件ほど並んでいます。そこでは、座席カバーに使われているお馴染みの布地や縁取り用パイプなどが、所狭しと置かれています。ここではBebabebagのための色とりどりの布地とパイプを買いました。

市内中心部ダウンタウンのAccra通りとLuthuli通りの間にある狭いストリートには、大量のさまざまな一般用布地を売るお店がたくさん並んでいます。ここではジッパーを購入しました。



材料の仕入れと並行して、アトリエではパターン制作も行なわれています。これまでにさまざまな大きなモノを運搬する人の姿を撮影した写真から、パターンをおこしてゆきます。

町を移動する大きなモノと、人や物を運んできた座席シートが、まったく異なる文脈で出会って混ざり、ストリートで不思議な行進をおこなうための第一段階。着々と進んでいます。

2012年9月21日 西尾咲子

Kuona Trustアートセンターで展覧会についてのミーティング

ナイロビの西部ハーリンガム地区にあるKuona Trust(Centre for Visual Arts in Kenya)というアートセンターで、キュレーターのザビエル・ベルホストさんとアーティストのデニス・ムラグリさんとミーティングを行ないました。西尾工作所ナイロビ支部とデニス・ムラグリが共同で展覧会をつくるための作戦会議です。この展覧会は2012年12月半ばから、または2013年1月初頭からの1ヶ月間、ウェストランド地区Le Rustiqueにて開催を予定しています。



デニス・ムラグリさんはナイロビ在住で、廃材の木や金属をリミックスして彫刻作品を作ったり(アフリカお馴染みの廃材アートとは一線を画す、かなりセンスが良く、質の高い詩的な作品)、独特の複雑な色の組み合わせが魅力の絵画やコラージュなど、さまざまなメディアに取り組んできました。都市的で同時代的な感覚と実験心が、ナイロビのアートシーンに新しい風を吹かせています。

今回、彼と共同で展覧会をつくるに至った背景は、発表時期が重なっているということ以上に、ここ最近の彼がマタツをテーマにした木版画を精力的に制作しているという、インスピレーションの共通性に興味をおぼえたからです。



Kuona Trustはナイロビを代表するアートセンターで、30名近くのアーティストがスタジオを構えており、ショップや食堂、ライブラリー、ギャラリーなども併設されたアーティストのための複合施設です。広い庭にのびのびと作品と作家がくつろいでいる様相はまるで天国さながら。さまざまなワークショップや上映会、イベント、アーティストトーク、レジデンスなどが頻繁に企画開催されています。

2012年9月19日 西尾咲子

展覧会場Le Rustiqueでの下見



今日は、ウェストランド地区にあるLe Rustiqueという欧風カフェギャラリーへ下見にやってきました。ここで、今年の12月初めから1月半ばにかけて、デニス・ムラグリさんと共同で、トランスポート(輸送手段)をテーマにした展覧会を行なう予定です。
このカフェギャラリーは個人邸宅をリノベーションした建物で、暖炉のあるエントランスから大広間に連なって広々とした緑あふれる庭までの、気持ちよく吹き抜けたアプローチが素敵です。カフェという場所柄もあり、これまでは平面作品を壁に掛ける展示ばかりでしたが、現在展示中のAlex Wainainaが彫刻を展示しているということで、立体作品がどのように展示されているかを下見するのが、今日の目的です。ところがAlexの作品は今まさに撤去中で、キュレーターと次回展示のアーティストEphrem Solomonが搬入設営中。結果的には両方の作品を見ることができてラッキーでした。



Ephrem Solomonはエチオピアのアディスアベバ出身で1985年生まれ。今回の個展は、ケニア初のエチオピア人アーティストによる個展、と謳われています。彼の作品がとてもセンスが良く、お客の目を惹いていました。伝統的な版画技法やテーマを用いながらも、現代的な工夫でひと味つけ加えており、小洒落さが漂っています。とりわけ、原版そのものに着色と新聞コラージュで装飾した椅子シリーズが面白いです。腰掛けて休む支えとしての「平和」と、継承される王座としての「権力」という、彼なりのモチーフの読み込みが裏に潜んでいるようです。Ephremの展示は10月17日までとのこと。

2012年9月14日 西尾咲子

マタツ職人との話し合い



ナイロビ市内にあるンガラ地区とギコンバ市場の間には、マタツのパーツ生産やシートカバーなどの縫製を行なう職人たちの工房と仕入れ問屋が集まっています。タウンから東の喧騒激しい下町を通り抜けて、徒歩15分くらいの距離にあります。今日は「Bebabebag(ベバベバッグ)」の制作をいっしょにしよう、というお願いをしにやって来ました。

西尾工作所ナイロビ支部では、約3年前にもここで暮らしながら仮設工房を設けて〈Overall〉という制作活動を行いました。鉄パイプや布地を解体したり接合したり、ものづくりの音と熱気であふれる場所一帯が工場のような空間です。



3年前に出会った人たちも健在で、久々の再会を喜びつつ、職人たちに私たちのやりたいことを説明してくれます。職人のひとりキアリエさんは、10月頭から一緒に制作をしようと約束をしてくれました。工房のすぐ近くには、マタツシートの素材問屋があって、車内でよく見かける色とりどりの布地や縁取りパイプが並んでいます。やっぱり制作環境として、とても魅力的な空間です。

2012年9月11日 西尾咲子


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